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『こんなんやってらんねえわ・・・』

例えば商品入荷後の大量のダンボール箱潰し。

みんなそう言うけど僕は違う。

だって、"僕を男に" してくれた仕事だからね。

僕の名前は響(ひびき)。19歳の社会人1年生。

例えそれが"新人への洗礼"的な業務指示だったとしても、

どうってことない。


(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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あれは僕が幼稚園の頃。父はサラリーマンで営業だった。

父は日曜日に近所の得意先に納品に行くことがあって、

よく僕と妹の琴音(ことね)を一緒に連れて行ってくれた。

その会社にはとても気さくな社長さんが居て、


『おお!響くん、琴音ちゃん、今日も来てくれたのか!』


と言って、いつもお菓子やジュースをくれた。

他の従業員さんも僕等兄妹をかわいがってくれた。


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そんなある冬の日曜日・・・

父はいつものようにその会社の納品に連れて行ってくれた。

僕は買って貰ったばかりのヒーロー手袋を自慢したくて、

喜んでついて行った。


その日は運ぶべきダンボール箱が2箱有ったんだけど・・


小さな男の子が大きなダンボール箱を持とうとする時は、

褒められたい、カッコつけたい、認められたい、

そんな純粋な想いがあったりする・・・

でもその日の僕の純粋は限りなく野心に近かった気がする。


みんなに褒められる妄想で一杯になってしまった僕は、


『こっちの箱は僕が持ってあげるよ』( +・`ー・´)

と言った。すると琴音も


『私も私も~、持つ~』(*`▽´*)

と言った。


父は制したが僕等があまりにも懇願するので、


『じゃあ、うんと気をつけろよ、ゆっくりだぞ』 ノ*´Д`)ノ


と言って箱運びを許可してくれた。

頭の中では『おお!エライな~!頑張ったな~!』

と皆に褒められる場面がふわふわと浮かんでいた。


しかし、その計画は簡単に崩れた・・・


ゆっくり、一歩づつ階段を昇り終えたその時、

一瞬気を抜いた琴音の手から箱がスルっと落ちた。

箱は階段をそのまま転がり落ち・・・・・!!


ゴロゴロ!ドン!ガタン!ボコ! "パリン・・・"


最後に"パリン"と鈍い音が聞えて箱は静止した。


(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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『あああああああ~!!!』Σ(ОД○*)(*○*)Σ(゚口゚;)

という僕達声が響き、僕達は固まった。


父が、箱にゆっくり近づいた。


『箱は外傷ないけど・・・』(;´゚Д゚)


恐る恐る父は箱の蓋を開けた。


『あ~~~~・・・』(ノ_< ;)


その表情で中身がどうなったかすぐにわかった。

すると箱の音と僕達の声を聞いた社長さんが慌ててやって来た。


『おいおい、どうした?なんか凄い音と声がしたけど』

『し、社長、あの、すみません・・・』(人;´Д`)


父は社長さん見るや深々と頭を下げた。


『も、申し訳ありません!すぐ再製作致します』m(_ _;)m!!


『いや、まあ、うん、誰も怪我はしてないかい?』( ̄ー ̄)


社長さんはまず僕達を気遣ってくれた。


『はい、怪我はありません・・・』

『良かった。にしても、派手にやっちまったねえ』(;´ー`)


社長さんは苦笑いした。

いや、僕と琴音の前で深刻な表情をせずにいてくれていた。


『でも参ったな。これ、次はいつ入りそう?』(;´ー`)

『すぐに調べて御連絡します。本当にすみません!!』m(_ _;)m


父は何度も何度も頭を下げた。

僕は初めて大人の世界を垣間見てすっかり怖じ気づいてしまった。

そしてこの箱の中身やこの会社の人達がどれだけ大事なのか、

それを子供なりに初めて感じた。


すると、僕の体と口が無意識に動いた。


『社長さん、悪いのは父ちゃんじゃないんです!!

 僕がしっかり持たなかったのが悪いんです!』(`;ω;´)


父と社長さんは少し驚いていた。


『だから僕を怒って下さい。せきにん、僕がとります』。


僕の"セキニン"という言葉に二人は更に驚いていた。


僕がうつむいて顔をしかめていると、

社長さんがゆっくりと僕の目線まで膝を降ろした。


『響くん、責任て、どうしようってんだい?』


社長さんは落ち着いた優しい口調で言ってくれた。


"あんたが責任とって、罰として〇〇やりなさい!!"

とよく母に言われるのを思い出し、僕はこう答えた。


『社長さんの仕事、なんでもやります・・・』(`;ω;´)


僕は半泣きだった。

社長さんは僕の目をじっと見た。威圧的ではない優しく深い眼差しで。


『よし、わかった』(,´^ω^)ノ


そう言うと社長さんはスッと立ち上がり、こう言った。


『お子さんを半日ほどお預かりしてもいいですか?』


『え!?いいですが・・逆にご迷惑じゃ?』


『迷惑じゃないですよ。夕方には私がお宅に送りします。

 よし響くん、今日は働いてもらうぞ~!!』ヾ(´∀`*)



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父と琴音は帰り、僕は社長さんとある部屋に来た。

そこには空のダンボール箱が大量に積まれていた。

『よし、響くんにはこの箱をつぶして畳んで積んでもらう!

 箱の底はテープが貼ってないからカッターは使わない。

 それからその手袋はしたままだ。できるな!!』


『はい!』(゚д゚)/


社長さんが手本を見せてくれ、僕も始めた。


『おお!響くん、なかなかスジがいいな!』(`▽´)


僕はいつの間にか得意顔になっていた。

初めて感じた緊張と興奮と高揚感、そして幸福感。

なんでだろう、なんだか楽しかった。

きっと社長さんが楽しく感じるようにしてくれたんだ。


30分程で全部片付き、二人とも汗だくで髪の毛くしゃくしゃだった。

社長さんもずっと一緒だった。僕の安全を見守ってくれていたんだ。


『響くん、よく全部終わるまで頑張ったな!』(`▽´)


そう言ってにっこり笑った社長さんの顔・・・

箱を落とした時のおどおどした気持ちはすっかり晴れていた。

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『よく頑張ったね、助かったよ!ありがとう!』

作業後、会社の皆さんが僕に声をかけてくれた。

当初描いたイメージ通りではないけど、

いやそれ以上の形で僕の妄想は現実となった。

それから社長さんは僕をレストランに連れて行ってくれた。


『頑張ったからな、なんでも好きなものを食えよ』(`▽´)


と言う社長さんの顔はやっぱり優しくて暖かだった。


『響くんのお父さんはな・・・

 とっても責任感が強くて頑張り屋さんなんだよ。

 だから仕事を頼んでるんだ。お父さんを誇りに思うんだぞ。』(`▽´)


僕はその時、心底父を誇りに思った。


『響くん、良かったら将来うちに来い!』(`▽´)

『はい、将来は社長さんの会社で働きます!』o(^▽^)o


人に認めて貰えた気がして、僕はすっかり有頂天だった。

でも帰りの車の中で疲れきった僕はすっかり眠り込んでしまい、

最後は社長さんに挨拶もできなかった。


その後、父は無事に再納品を済ませる事ができた。

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僕は今でもあの日の事をよく思い出す。


社長さんは僕に責任をとらせてくれて、気持ちも楽しくしてくれた。

仕事の楽しさ、厳しさ、尊さも教えてくれた。

社長さんのくしゃくしゃ顔とダンボール箱の匂い・・・

あの時を思い出せば大抵の事は乗り越えられる気がする。

まったく誰だよ、

『ダンボール潰すのめんどい』なんて言ってんのはさ(o^∀^)


FIN



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    【編集後記・へんしゅうこうき】


社長さんは後にこう言っていたそうです。

『あの時の行動が正しかったどうかは今もわからない。

 でも彼の男気にどうしても答えてあげたかった。

 取引先の息子さんとか、私が社長だとかではなく、

 私も一人の男として。』

年齢差はあれど本気の男同士に潰されたダンボール箱も、

きっとダンボール箱冥利に尽きたことだろう。なんて・・・


最後までお読み下さりありがとうございました。

m(__;)m

ライティング兼編集長:メリーゴーランド